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長野地方裁判所諏訪支部 昭和51年(ワ)79号 判決 1982年12月13日

主文

一  被告らは各自原告に対し金九二七万七四〇〇円及びうち金八五七万七四〇〇円に対しては昭和五一年一一月七日から、うち金七〇万円に対しては昭和五七年一二月一四日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を被告らの、その余を原告の各負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自原告に対し金一四七四万四四二〇円及びこれに対する昭和五一年一一月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  第1項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

昭和四七年一二月一九日午前八時ころ、被告林武が二トンダンプトラツクを運転して県道上田茅野線を進行中、長野県茅野市長倉において、対向車と擦れ違う際、道路左端にあつた石に同車左前輪を乗り上げ、その衝撃で助手席に同乗していた原告が頸椎挫傷、頭部打撲症の傷害を負つた。

2  責任原因

(一) 本件加害車両は、被告有限会社五月屋(以下「被告会社」という。)が自己のために運行の用に供している車両である。

(二) 被告林武は、対向車と擦れ違う際には、速度を落し、道路端に寄る場合には、障害物の石等に乗り上げないように注意して運転すべき義務があるのに漫然と運転した過失により本件事故を惹起したものである。

3  損害

(一) 治療費関係 合計金一五九万四九二〇円

(1) 入院雑費 金二一万九五〇〇円

原告は久保整形外科医院、関東労災病院、諏訪赤十字病院、昭和伊南総合病院及び諏訪湖畔病院(以下「久保医院」「労災病院」「諏訪日赤」「昭和伊南病院」「湖畔病院」という。)に合計四三九日間入院したので、一日当り金五〇〇円として合計金二一万九五〇〇円となる。

(2) 付添費 金五一万六〇〇〇円

河西かづみ他五名に合計一七二日の入院付添を依頼したので、一日当り金三〇〇〇円とすると合計金五一万六〇〇〇円となる。

(3) 治療費等原告負担分 合計金二万五三〇〇円

長生医院 金一万〇二〇〇円

鈴木治療院 金三八〇〇円

湖畔病院(診断書作成) 金四〇〇〇円

矢崎治療院 金五三〇〇円

諏訪日赤 金一〇〇〇円

昭和伊南病院 金一〇〇〇円

(4) 交通費、宿泊費、食費等 合計金八三万四一二〇円

(久保医院) 金三万六九五〇円

付添人交通費として一日金二二〇円で三五日分金七七〇〇円。食費は、一人金四五〇円で六五人分合計金二万九二五〇円。

(労災病院) 金四九万円

付添人交通費金四万円、同宿泊費二五日分合計金一〇万円。通院交通費金一五万円、同宿泊費四〇日分合計金二〇万円。

(長生医院) 金一三万六〇〇〇円

通院交通費四〇回分合計金一三万六〇〇〇円

(諏訪日赤) 金一万八七〇〇円

通院交通費一七日分合計金一万八七〇〇円

(昭和伊南病院) 金二万円

救急車使用料金五〇〇〇円。付添人交通費三回分合計一万五〇〇〇円。

(湖畔病院) 金一三万二四七〇円

(二) 慰謝料 合計金一三〇〇万円

原告は長期間入通院を続けているが、その症状は頭痛、右顔面・左半身の知覚低下、眩暈感強度、視力減退、難聴、平衡機能障害等で、日常生活も非常に困難であり、現在も治療中であるが、症状はほぼ固定し、回復の可能性はない。したがつて、入通院慰謝料は金五〇〇万円、後遺症慰謝料金八〇〇万円が相当である。

(三) 弁護士費用 金一〇〇万円

(四) 損害の填補 合計金八五万円

被告会社は、昭和四九年一二月二七日金七〇万円、昭和五〇年一二月二七日金一五万円を支払つた。

4  以上のとおり、原告が被告らに請求しうべき損害合計は金一四七四万四九二〇円となるが、原告は被告らに対し、各自金一四七四万四四二〇円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和五一年一一月七日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴に及んだ。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1記載の事実のうち、原告の受傷の部位程度は知らないが、その余の事実は認める。

2  同2(一)記載の事実は認めるが、(二)記載の事実は否認する。

3  同3記載の事実のうち、損害の填補は認めるが、その余は争う。

原告の現在の症状は、本件事故のみに起因するものではなく、原告の高血圧症及び腎盂炎の影響もあり、その全部を本件事故と相当因果関係があるとすることはできない。

また、原告は現在労災年金及び国民年金の支給を受けているが、その支給額は、原告が健康で稼働していると仮定した場合の収入の約二倍で、治療費も必要があれば別に労災保険から支給される状態である。したがつて、後遺障害による苦痛も既に慰謝されているとみるのが相当である。

三  抗弁

1  被告会社は原告に対し次のとおり合計金六三万九二二〇円を支払つた。

(一) 昭和四七年一二月三〇日 金五〇〇〇円

(二) 昭和四八年一月二五日 金五〇〇〇円

(三) 同年三月一日 金八万一〇〇〇円

(四) 同年五月八日 金一〇〇〇円

(五) 同月九日 金八八〇〇円

(六) 同日 金五万円

(七) 同年六月二二日 金五万円

(八) 同年七月七日 金五万円

(九) 同日 金六七三〇円

(十) 同年一一月二六日 金二万円

(十一) 同年一二月三一日 金三万円

(十二) 昭和四九年二月七日 金六九〇円

(十三) 同年三月三日 金一〇〇〇円

(十四) 同年七月二二日 金三万円

2  被告林は、昭和四八年七月二七日金三〇万円を原告に支払つた。

四  抗弁に対する認否

抗弁2記載の事実は認めるが、同1記載の事実は否認する。そのうち、(三)は付添料であるが、この付添料については原告において損害から控除しており、請求していない。その余については、いずれも少額の見舞であり、損害の填補とは評価できない。

第三証拠

本件記録中の書証、証人等目録記載のとおりである。

理由

一  請求原因1記載の事実のうち、原告がその主張のとおりの傷害を負つたことは成立に争いのない甲第一号証により認めることができ、その余の事実は当事者間に争いがない。

二  同2(一)記載の事実は当事者間に争いがない。

被告林武本人尋問の結果(第一、第二回)によれば被告林は、本件事故当日、普通貨物自動車を運転し、助手席窓側に原告、運転手側に訴外中村君枝を同乗させて作業現場に向かう途中、本件事故現場に差し掛つたところ、対向車(普通乗用自動車)が進行して来たため、これと擦れ違うべくハンドルを左に切つたところ、道路端にあつた成人の頭大の石塊に自車を乗り上げさせて落下したため、原告は、その衝撃でその頭部を車内に衝突させたこと、本件事故現場付近の道路は、舗装はされているが幅は五メートル足らずで、被告林の進行方向右側は細い用水路で左側は土堤になつており、舗装が切れた部分には雑草が生えていたが、事故当時は枯れていたこと、被告林は、前方に対向車を発見したが、そのまま擦れ違うことができると信じて進行したところ、対向車が思いの外自車側を進行して来たので、危険を感じて左にハンドルを切つたところ石塊に乗り上げたものであること、をいずれも認めることができ、右認定を左右するに足る証拠はない。

そこで被告林の責任であるが、右に認定した事実からすれば、被告林は、道路左端の舗装が途切れた部分に石塊があることは予想しえた筈であり、狭い幅員の田舎道で対向車を認めたのであるから、予め減速したうえ自車を道路左側に寄せて擦れ違うべきであり、そうすれば、仮に石塊に阻まれたとしても、これに乗り上げかつ落下して同乗者に衝撃を与えることはなかつたというべきである。そして、車体をバウンドさせた場合、同乗者が車内に衝突することは通常予見しうべき事態であるということができる。してみれば、被告林には対向車と安全に擦れ違うべき注意義務を怠つた過失があり、右過失と原告の受傷との間には相当因果関係が存するから、被告林は原告が本件事故によつて被つた損害を賠償すべき義務があることとなる。

三  いずれも成立に争いのない甲第二ないし第一一号証、証人長林文夫の証言及びこれにより真正に成立したと認める甲第一二ないし第一四号証、第一七号証及び前掲甲第一号証並びに証人高原淑夫の証言によれば、次のとおり認めることができる。

1  原告は、本件事故発生当日から昭和四八年五月一四日まで一四七日間久保医院で入院治療を受けたが、その際の診断は頸椎挫傷兼頭部打撲症で、症状は、頭痛、眩暈、意識障害及び歩行失調であつた。その後の昭和四八年五月一八日労災病院に転院し、一回通院した後の同月二〇日入院し、腎盂炎の治療を受けたあと脳神経外科に転科し、同年七月二日まで精密検査を主目的として入院したが、診断は頭頸部外傷で、退院後は、薬物療法と自宅における社会復帰への努力を要すると判断されたが、後遺障害については判定する時期ではなく、継続治療の必要があるとされている。その後の同年一〇月二日から同年一二月一日まで合計七回横浜市内の長生医院に通院し、高血圧症及び変形性脊椎症の治療を受け、その後の昭和四九年一月二一日から同年五月一五日まで一一五日間諏訪日赤に入院し、翌一六日から同年六月一二日まで七回通院し、同月一五日から同年七月二二日まで(三八日間)再度入院し、同年八月一三日から昭和五〇年四月八日まで二一回通院して治療を受けたが、同年一月七日、病名頭頸部外傷症候群で左半身麻痺、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈、耳鳴りが著明であり、完治の期待性はないと診断されている。右諏訪日赤で療養中の昭和四九年七月二二日難治性との理由で諸検査のため昭和伊南病院に入院し、同年八月一日退院した(入院一一日間)。その後の昭和五〇年四月九日湖畔病院で診察を受け、同年六月四日、頭痛、霧視、頸部痛、右顔面知覚低下、左上下肢の腕力及び知覚低下、難聴並びに眩暈があり、右諸症状は外傷性頸部症候群及び頭部外傷による脳幹機能障害によるものと疑われるとの診断がなされ、その後、同病院には、昭和五一年三月二三日から五月二九日まで六八日間入院し、同年六月八日から昭和五二年四月三〇日までの間に四一回通院し、更に同年五月一日、二日の両日入院し、同月二日から同年一〇月三一日までの間に二八回通院し、昭和五三年一月三一日から同年二月七日まで八日間入院した。

2  昭和五三年九月当時の原告の症状は、昭和五〇年九月頃までのそれと同じで、症状は固定しており、治療を継続しても症状改善の見込みはなく、自覚症状を多少とも和らげる効果が期待できるにすぎないけれども、昭和五七年現在月に二度湖畔病院に通院しており、症状にさほどの変化はなく、頭痛、眩暈、言語障害、平衡機能障害が残存し、急に転倒することがあり、家事労働にもほとんど従事することができない。なお、昭和五一年四月一〇日同病院において、障害の程度は身体障害者福祉法施行規則七条三項別表第五号中二級相当との診断を受けている。

3  原告は高血圧症に罹患しており、動脈硬化の徴候はあつたが現在原告の血圧は正常に制禦されており、また右疾病のみで原告の現在の症状を説明することはできない。

4  昭和五五年六月一二日作成の諏訪日赤医師の診断書には、頭痛、眩暈、悪心が続いていたが、対症療法、リハビリテーシヨンにより軽快し、昭和五〇年五月末治癒、後遺障害なし、と記載されているが、右診断書作成医師は原告担当ではなかつた。以上のとおり認めることができ、右認定の諸事実からすれば、原告に現在も現存する後遺障害は、主として頭部外傷による脳幹機能障害に起因するものであり、本件事故以後の原告の症状は、右障害及び外傷性頸部症候群に基づくものであつたが、全体として徐々に軽快し、昭和五〇年五月末には症状は安定し、固定したとみることができる。したがつて、本件においては、被告らは原告に対し、本件事故と相当因果関係のある損害として、同日までの治療費関係の損害及び慰謝料並びに同日以後の後遺障害に対する慰謝料を賠償すべき義務があることとなる。

四  そこで、具体的な損害額について検討する。

1  証人長林文夫の証言及びこれにより真正に成立したと認める甲第一五、第一六号証、第一八ないし第三〇号証、前掲甲第一ないし第三号証、第五ないし第七号証、第一四、第一七号証によれば、原告は久保医院では、入院当日から昭和四八年二月一日まで四五日間河西かづみ他の、労災病院では入院の全期間の四四日間渋谷かの江の、昭和伊南病院でもその入院の全期間の一一日間河西かづみ他のそれぞれの付添看護を受けたが、右看護は原告の当時の症状に照らし必要なものであつたこと、原告は鈴木治療院でマツサージ治療を受け、昭和四八年七月一三日金三八〇〇円を支払い、また長生医院における治療費として昭和四九年一〇月七日金一万〇二〇〇円を支払つたこと、そのころ矢崎治療院ではり治療を受け、治療費金五三〇〇円を支払つたこと、諏訪日赤から昭和伊南病院への転院は救急車を使用し、使用料金五〇〇〇円を要したこと、長生医院への通院はタクシーが必要で、一回につき金三四〇〇円を要したこと、諏訪日赤への通院には一回金一一〇〇円を要したこと、をいずれも認めることができる。右の事実に前認定の原告の入通院の経過を総合して検討すれば、原告の治療費関係の損害については、次のとおり認めるのが相当である。

(一)  まず、入院雑費については、症状固定までの入院日数三五五日に対し一日金五〇〇円として合計金一七万七五〇〇円。

(二)  付添費は、合計一〇〇日の入院付添に対し一日金三〇〇〇円として合計金三〇万円となる。原告はこれを超える期間入院付添を要したと主張するが、これを認めるに足る証拠はない。

(三)  原告の症状が固定するまでに原告が負担した治療費は、長生医院分金一万〇二〇〇円、鈴木治療院分金三八〇〇円、矢崎治療院分金五三〇〇円以上合計一万九三〇〇円である。原告の主張するその余の原告負担治療費は、証人長林文夫の証言及びこれにより真正に成立したと認める甲第三一ないし三七号証によれば、いずれも診断書作成費用であることが認められ、これは被告らの負担すべき原告の損害とすることは相当でないというべきである。

(四)  交通費、宿泊費、食費等について 合計金七万〇六〇〇円

(1) 久保医院関係

一日金二二〇円とみることができるので四五日分金九九〇〇円となる。付添人の食費は、付添費と別に被告らに負担させるのは相当でない。

(2) 労災病院

昭和四八年当時の四四日分の付添人交通費として原告の主張する金四万円は高額に過ぎ、これを被告らに負担させることはできない。

また、付添人宿泊費は特別の事情のない限り被告らに対し請求できないというべきで、本件において右特別の事情を認めることはできない。

原告自身の右病院への通院は、証拠上一回にすぎず、右以上の通院を前提とする原告の通院交通費、同宿泊費の請求は、いずれも理由がないというべきである。

(3) 長生医院

七回の通院につき一回金三四〇〇円で、合計金二万三八〇〇円となる。

(4) 諏訪日赤

二九日の通院につき一回金一一〇〇円で、合計金三万一九〇〇円となる。

(5) 昭和伊南病院

救急車使用料金五〇〇〇円は被告らの負担すべき損害であるが、付添人交通費は前述のとおり右の損害とすることはできない。

(6) 湖畔病院にかかる付添費、交通費等は、症状固定後のもので、かつ本来の治療費とは異なるものであるので、それ自体としては被告らが負担すべき損害とすることはできない。

2  慰謝料について

弁論の全趣旨により真正に成立したと認める乙第五号証、前掲甲第一、第四号証、証人高原淑夫、同長林文夫の各証言及び被告会社代表者本人尋問の結果によれば、原告は、大正一一年六月二九日生れで、本件事故当時五〇歳で、通常の健康体の女子であり、道路、河川等の改修を業とする被告会社に昭和三〇年頃から雑役として勤務していたこと、原告の昭和四五年一年間の勤務日数は一七九・九日で、昭和四六年及び昭和四七年各年度のそれは、それぞれ二六〇・九日、二七一・九日であり、被告会社に雇傭されている他の同職種の婦人達と同程度の勤務状態であつたこと、を認めることができる。右に認定した事実に前記三において認定した入通院の経過及び後遺症状の程度並びに本件事故態様は前記二において認定したとおりで被告林の責任は免れないものとしても、その過失の程度は比較的軽度であること等に徴すれば、入通院慰謝料は金二五〇万円、後遺障害慰謝料は金六〇〇万円と評価するのが相当である。なお、成立に争いのない乙第六号証、調査嘱託に対する岡谷労働基準監督署長の回答によれば、原告は労働者災害補償保険法(以下「労災法」という。)に基づく休業補償給付、傷病補償年金及び療養補償給付を受け、また、昭和五〇年一二月一九日以降は国民年金法に基づく障害年金の支給を受けていることが認められるが、右給付は、いずれも原告の被つた財産的損害に対する給付の性質を有するものであり、その精神的損害に対する給付の趣旨を含むものではない。また、原告が本件受傷により労働不能の状態に至り、右状態が将来とも継続することが予想されることは前認定のとおりであつて、原告は、本訴においてはその休業損害及び後遺障害による逸失利益については右各給付により填補されうるとして被告らに請求してはいないところ、前掲甲第一九号証、乙第五、第六号証、調査嘱託に対する岡谷労働基準監督署長の回答及び弁論の全趣旨によれば、原告の本件事故前一一か月間の平均一か月間稼働日数は約二三日であること、原告の被告会社における日当は、昭和四八年一月は金二二〇〇円、昭和四九年八月は金三五〇〇円であること、右時期の労災法に基づく給付額は、一日当り約金七二七円で、当時は国民年金法に基づく給付はなされていなかつたこと、昭和五六年現在の原告の労災法及び国民年金法に基づく受給額は一か月金一七万四二九五円であること、をいずれも認めることができ、右事実からしても、各種社会保険収入が原告の逸失利益を大幅に超過するから、原告の精神的損害も既に填補されている旨の被告らの主張は、これを採用することができない。

五  抗弁2記載の事実は当事者間に争いがない。

いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したと認める乙第一ないし第四号証の各一、二によれば、被告会社は原告に対し、次のとおり金員を支払つたことを認めることができる。

昭和四七年一二月三〇日 金五〇〇〇円

昭和四八年一月二五日 金五〇〇〇円

同年六月二二日 金五万円

同年七月七日 金五万円

同年一一月二六日 金二万円

同年一二月三一日 金三万円

昭和四九年七月二二日 金三万円

右の他、前掲乙第二号証の一、二によれば、被告会社は昭和四八年三月一日中野けさ子に付添看護費として金八万一〇〇〇円を支払つたことが認められるが、そうすれば、原告は当時付添看護を要したのであり、原告は、右付添看護費は既に支払われているとの理由で本訴における損害からは控除しているのであるから、右金額を更に控除することはできないというべきである。被告らの主張するその余の弁済はこれを認めるに足る証拠がないかあるいは少額の見舞品費用であつて、損害の填補と評価することはできない。

六  以上によれば、治療費関係損害金五六万七四〇〇円、慰謝料金八五〇万円となり、これから控除さるべき被告らによる弁済額は金四九万円となるので、原告が被告らに請求することのできる損害額は、合計金八五七万七四〇〇円となる。

七  本件訴訟の難易度、審理経過、認容額等に照らすと、本件事故と相当因果関係ある損害として被告らの負担すべき弁護士費用は金七〇万円と認めるのが相当である。

八  よつて、原告の本訴請求は、被告らに対し各自金九二七万七四〇〇円及びうち金八五七万七四〇〇円に対しては訴状送達の翌日である昭和五一年一一月七日から、うち金七〇万円に対しては本判決云渡しの日の翌日である昭和五七年一二月一四日から各支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので、これを認容するが、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤誠)

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